今日一日、様々な憶測を重ね。

私は、奏さんの身に起きた「何か」を推測しました。

色々思い付きましたが、やはりその中でも有力なのが。

また、誰かに邪魔者扱いされたのではないか、という推測です。

これまでの傾向から考えて、この可能性はとても高いと思います。

今までも、何度もありましたからね。

忌々しいことに。

もしかして、施設に暮らしている誰かに、冷たい言葉をかけられたのではないか。

あるいは、この間の…初詣の帰りに起きた事件のように。

奏さんの昔の知り合いと遭遇して、その方に、心無い言葉をぶつけられた、とか。

多分、そのようなところでしょう。

「スマホを水没させて壊しちゃった」とか、「机の角に小指をぶつけた」とか、そのような不幸な事故で落ち込んでいる訳ではないことは、明白です。

何故なら、そのような不幸な事故なら、私に隠す必要がないからです。

私に隠すということは、私には知られたくない何かが起きたのです。

これまでの傾向からして、奏さんは自分の障害をあげつらうことを言われたとき、黙り込んでしまう癖があることは知っています。

だから今回も、奏さんが頑なに黙っているのは、その癖のせいだと推測します。

とはいえ、これはあくまでも憶測です。

本当のところは、奏さんに聞いてみなければ分かりません。

しかしいくら聞いても、奏さんは答えてくれません。

私は信用されていないのでしょうか?

私に話しても、何も解決しない、私には助けられないと?

そう思われているのかと思うと、何だか悲しいです。

私は、それほど非力だと思われているのでしょうか。

そこらの人間よりは頼りになるアンドロイドだ、という自負があったので、余計悲しいですね。

しかし。

これしきのことで、私は親友を助けることを諦めたりはしません。

石に齧りついてでも、親友を助けます。

『Neo Sanctus Floralia』第4局の、『新世界アンドロイド』として。

そう、私はアンドロイドのプライドを懸けて、奏さんを救います。

その為にはやはり、まず、奏さんに何が起きたのかを知る必要があります。

しかし奏さんは、私にそれを教えてはくれません。

あの頑なな様子では、少々の説得では、奏さんの鉄壁の要塞は崩せないでしょう。

ならば、どうするか。

本人の口から、確かめることが出来ないのなら。

私の目で、確かめるまでのことです。