…奏さんの。

様子が、おかしいです。

先週までとは、全く違います。

今日は月曜日ですから、奏さんは琥珀さんと一緒に登校したはずですが。

琥珀さんは、気づかなかったのでしょうか?

しかし、私はすぐに気づきました。

奏さんの様子が、先週までとは大違いです。

「どうされたんですか?奏さん」

「え?いや…瑠璃華さんがどうしたの?」

「私は、フォンダンショコラを作ってきました」

と、私は言いました。

「え?フォンダンショコラ…?」

「はい。先週、琥珀さんが奏さんに、手作りのチーズケーキフォンダンショコラを渡したでしょう?」

「う、うん。もらったね」

「…ちなみに、それは美味しかったですか?」

と、私は聞いておきました。

どうしても気になったのです。

「あ、うん。フォンダンショコラなのにチーズケーキの味がして、凄いなって思った。美味しかったよ」

と、奏さんは答えました。

成程。さすが琥珀さんです。

しかし、私も琥珀さんに負けてはいられません。

その為に、苦労して作ってきました。本日のフォンダンショコラを。

「そこで私も、琥珀さんに負けじと、フォンダンショコラを作ってきました」

「そ、そんな…。勝負してる訳じゃないんだから…」

と、奏さんは言いました。

はい。勝負しているつもりはないのですが。

何故か、対抗心がメラメラと湧いてきまして。

アンドロイドの血が騒いでしまっています。

「そんな訳ですから、受け取ってください」

「う、うん…。ありがとう、嬉しいよ。…まさか好きな女の子に、バレンタインチョコをもらう日が来るなんて…。いや、バレンタインはまだなんだけど…」

と、奏さんは呟いていました。

好きな女の子…?

親友ですから、お互い好きなのは当然ですね。

「ちなみに、そのフォンダンショコラですが」

「うん。チーズケーキとかじゃなくて、普通のフォンダンショコラ?」

「はい。普通のフォンダンショコラなのですが」

「そっか。やっぱりオーソドックスなのが無難で美味しいよね。瑠璃華さんありが、」

「カカオ豆から作っています」

「また凄いことに挑戦してるね!?」

と、奏さんは大声をあげました。

お褒め頂き、ありがとうございます。

やるなら本格的に、と思いまして。

「まず、よくカカオ豆が手に入ったね?」

「久露花局長に頼んで、輸入してもらいました」

「瑠璃華さんのお父さん、すご…」

と、奏さんは呆然と呟きました。

久露花局長は、チョコレートのパイオニアですから。

カカオ豆の輸入くらいは、お茶の子さいさい、という奴です。

私がチョコレートをカカオ豆から作りたい、と言ったら。

「バレンタイン最高〜!」とか言いながら、快く輸入の手配をしてくださいました。

その節は、ありがとうございました。