久露花局長との定期連絡を終えた、次の月曜日。

の、昼休みの時間。

今日は月曜日なので、琥珀さんも一緒です。

その場にて、私は奏さん本人に聞いてみることにしました。

「奏さんに質問があります」

と、私は言いました。

「え、どうしたのいきなり」

「奏さん、フォンダンショコラはお好きですか?」

と、私は尋ねました。

「フォンダンショコラ…?好きだけど…どうして?」

「いえ、今年のバレンタインのトレンドはフォンダンショコラだと、久露花局長に教わったもので」

と、私は説明しました。

「更に、奏さんにバレンタインのチョコレートをプレゼントしたら、世界が平和になると局長に言われまして」

「成程。何で俺にチョコを渡すことが世界平和になるのかは、全く意味が分からないね」

「もし奏さんがお好きなようなら、僭越ながら、バレンタインデーにチョコレートをプレゼントさせて頂きたいと思って、聞いてみた次第です」

と、私は言いました。

すると。

「…本当に?」

と、奏さんは聞きました。

何だか、目が輝いています。

「バレンタインに、チョコレート…。しかも女の子から。想像しただけで嬉し過ぎる」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

もしかして奏さん、それほどフォンダンショコラがお好きだったのですか。

それは知りませんでした。

久露花局長と、話が合うかもしれませんね。

「そんなに嬉しいのですか?」

「そりゃ嬉しいよ…。生まれてこの方、母親以外の女の人に、チョコレートもらったことなんてないんだもん」

と、奏さんは言いました。

「分かりました。では、フォンダンショコラをご用意して、奏さんに献上致します」

「ありがとう。俺もお返しを用意しておくよ」

と、奏さんは嬉しそうに言いました。

などという、私と奏さんのやり取りを。

「…」 

と、琥珀さんは無言で見つめていました。

忘れてはいけません。

彼女は、『新世界アンドロイド』1、負けず嫌いな性格であるということを。