さて、そのような昼休みが終わり。

放課後を迎えると同時に。

「お邪魔します」

と、待ち構えていたように、琥珀さんが教室にやって来ました。

クラスメイトは、またしてもぎょっとして、我が物顔で上級生の教室に入ってくる琥珀さんを見つめていましたが。

そのようなことは、琥珀さんは全く気にしません。

そして、彼女が真っ直ぐ向かうのは。

「奏先輩」

と、琥珀さんは言いました。

勿論、奏さんのところです。

「な、何…?」

「今日の放課後は、暇ですか?何か予定はありますか」

「いや、あの…。予定はないけど、」

「では、一緒にショッピングモールに行きませんか?」

と、琥珀さんは提案しました。

ショッピングモール…。

「え、な、何で?」

「何でと言われましても、それは奏先輩と、親睦を深めたいからです。時間を共に過ごせば、必然的に親睦は深まります」 

「それは…そうかもしれないけど…」

「ですから、行きましょう。何も予定はないのでしょう?」

「た、確かに予定はないけど、でも…」

と、奏さんは困ったような顔で言いました。

断ろうとしているのでしょうか。

堅豆腐になろうとしているのかもしれません。

しかし。

「予定がないなら、何も問題はないでしょう?」

「…それは…」

「だったら行きましょう。さぁ、日が暮れる前に」

「あ、ちょ、琥珀さん!?」

「出発です」

と、琥珀さんは言いながら。

奏さんの車椅子をぐいぐいと押して、教室から出ていきました。

…。

…一人、取り残された私は。

「…」

と、無言で空を見つめていました。