更に。

琥珀さんの、猛攻は止まりません。  

というのも、昼休みを迎えるなり。

「こんにちは。お邪魔します」

と、聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと。

教室に、琥珀さんがやって来ました。

…あの方は、中学生として転入してきたはずなのですが。

何故、高等部の教室であるここにいるのでしょうか。

他のクラスメイトの皆さんも、琥珀さんを見てきょとんとしていました。

しかし、琥珀さんは全く気にすることなく、ずんずんとこちらに向かって歩いてきました。

「こんにちは、奏先輩」

と、琥珀さんはこちらに来て言いました。

「あ、こ、こんにちは。…何でここにいるの?」

と、奏さんはきょとんとして聞きました。

私からも、全く同じ質問をさせて頂きたいです。

「奏先輩と、一緒にお昼を過ごそうと思いまして」

と、琥珀さんは言いました。

…。

…今何と言いましたか、このアンドロイド。

「え…」

と、奏さんもびっくりしていました。

しかし、琥珀さんは全く関係ないような顔をして。

「こちらの椅子をお借りしますね。では、失礼します」

と、琥珀さんは近くの椅子を借りてきて、私と奏さんの間に座りました。

クラスメイトと奏さんが、ポカンとしているのも気づかない様子です。

「え、いや…そんな、いや。何でここに、」

「人間は、正午になったら昼食を摂ると言います。従って、『人間交流プログラム』に参加する私も、今日から人間に倣って、昼食を摂ろうと思います」

と、琥珀さんは淡々と言いました。

「そして、折角ならこの昼休みの時間を、友人である奏先輩と、もっと仲良くなる為に使おうと思いました」

「は、はぁ…」

「幸いなことに、昼食を何処で食べなさい、という校則は、この学校にはありません。学食で食べても、教室で食べても、中庭で食べても良いのなら、高等部の教室で食べても良いはずです」

と、琥珀さんは言いました。

確かに、中学生が高校生の教室で、昼食を食べてはいけない、という校則はありません。

…ありませんけれど。

前例のないことではあります。