…。

…ホッとした?

何故、私がホッとするのですか?

奏さんの今の発言に、私が何を安心することがあるのでしょう。

理解不能です。

そして、理解不能なのは琥珀さんも同じでした。

「何故ですか?緋村さんは、今付き合っている女性や男性はいないのでしょう?何故駄目なのか、理解出来ません」

と、琥珀さんは言いました。

「…男性を選択肢に入れるのは、ちょっと遠慮してもらえるかな…」

「はい」

「それと、確かに俺は、付き合ってる人…は、いないけど」

「ですよね」

「…だからって、君の恋人にはならないよ」

と、奏さんは言いました。

「何故ですか?理由を教えてください」

「それはこっちの台詞だよ。君は何で、俺の恋人になりたいなんて言うの?」

と、奏さんは逆に聞き返しました。

珍しく、険しい顔です。

「それは、緋村さんのことが好きだからです」

「悪いけど、俺のことを好きになる要素が見当たらないよ。今日、ついさっき出会ったばかりなのに。俺の何を見て、俺と付き合いたいなんて言うの?」

と、奏さんは聞きました。

「確かに、私とあなたは初対面です」

と、琥珀さんは言いました。

そうですね。

「しかし、橙乃局長を通して、あなたのことは聞いていました。ここにいる、久露花瑠璃華さんの親友である、と」

「そうだね」

「それを聞いて、瑠璃華さんの親友になれるのなら、きっと、私の恋人にもなれるはずだと思いました」

「…」

と、奏さんは無言になりました。

発想の飛躍ですね。

何故そのような思考になるのか、理解不能です。

「だから、私はあなたのことが好きです。あなたの恋人になりたいです、緋村奏さん」

「…」

「私の恋人になってください」

「…嫌です」

と、奏さんは答えました。

「俺は、君の恋人になることは出来ない」

と、奏さんは繰り返し言いました。

やはり、私はその返事に安心しています。

何なのでしょう。この感情は。