「何と言われましても…。恋人として、ごく普通の過程を語ったに過ぎません」

「普通の中学三年生は、出会って三日目にホテルとか言わないんだよ」

と、奏さんは真顔で言いました。

奏さんの真顔モードが発動しました。

「駄目なのですか?では、いっそその辺の公園の茂みで…」

「何この子。不健全の極み…!」

と、奏さんは言いました。

…どういう意味でしょうか。

先程から、お二人が話していることの意味が分かりません。

「奏さん。ホテルとか、茂みとか、それはどういうことですか?」

と、私は尋ねました。

ホテル…パジャマパーティですか?

「え?そ、それは…」

と、奏さんは困惑したように口ごもりました。

「それは?」

「それは…それは…お、俺の口からは言えないことだよ!」

と、奏さんは、顔を真っ赤にして言いました。

…つまり、人に言えないようなことをするのですね?

きっと悪いことに違いありません。

脱法ドラッグですかね。それは危険です。

奏さんに、そのようなことをさせる訳にはいきません。

「琥珀さん。我々にドラッグは効きませんが、人間である奏さんには有害です。そして、そのような薬を所持、使用することは、人間のルールでは違法です。やめた方が良いでしょう」

「ドラッグ…?何のことですか?私はただ、恋人である緋村さんと、ホテルに行きたいだけです。他意はありません」

「そうですか。それなら良かったです」

「あぁもう!ツッコミが不在だよ!ツッコミが!!」

と、奏さんは叫びました。

髪をくしゃくしゃしています。大丈夫でしょうか。

「順番に話をしよう!まず、君…琥珀さんだっけ!?」

と、奏さんは琥珀さんに向かって言いました。

「はい。中等部三年、橙乃琥珀です」

「そう。琥珀さん、君は俺に何の用?」

「私の恋人になってください、緋村さん」

と、琥珀さんは改めて言いました。

…またです。胸がチクチクします。

何なのですか。この感情は。

すると。

「そっか。気持ちは嬉しいけど、でも俺は、君の恋人になることは出来ないよ」

と、奏さんはきっぱりと断りました。

それを聞いて。

私は何故か、ホッとしました。