ーーーーーー
ーーーーーーーー





「・・・・・うわぁーすご!・・・・本当に逃げてきたんだ私・・・・・・・」







 いくつもの段ボールが積まれた状態の新しい部屋を見渡すと、満足そうに頷く。





「”アイツら”から全力で逃げて、絶対に幸せになってみせるんだから!!!」






 真新しく、誰もいない虚しい部屋の中で一人。






 ーーーーーーー強い思いを瞳に宿した少女は、声高らかに宣言したのだった・・・・・・・
 







私、花園百合(はなぞのゆり)が高校生になってから四日目の木曜日。




 私のクラス、一年3組はいつも以上に騒がしかった。




「「転校生!?」」




 ついさっき職員室へ行ってきた日直の女子が大ニュースを持って帰ってきたのである。



 ”入学しきから少し遅れてやってきた転校生”



 皆その話題が盛り上がっていて、とにかく教室中がうるさい。特に女子が。



「男子っ!女子っ!どっちなの!?」





「え、えっと男子でしたよ。あとイケメンでした・・・・・・」



 
「ヨッシャアァァァア」
「どんな感じ!髪色は!?」



「ヒィッ!えっと・・・・髪色は黒で緑っぽい青のメッシュが入っていました・・・。」



 鼻息を荒くし、興奮しながら問い詰める女子とそれに怯え、恐る恐る答えている日直のの子。




 みんなにに質問攻めにされて可哀想に・・・・・と、憐れみ(あわ)哀れみの目でその光景を眺めながらふと、百合は思った。



(・・・・黒髪に緑のメッシュ・・・・・・?)



 百合の頭には、黒髪に緑のメッシュの高身長で爽やに微笑みながら、人の部屋に窓から不法侵入繰り返す、あるストーカー・・・・・幼馴染みの残念イケメンの顔が浮かんだ。



 もしかして・・・・と、思ったが、それはないと頭に浮かんだ男の子の顔を振り払う。



(あいつのわけないよね・・・・・・)



 嫌な予感を感じながら読みかけの本のページをめくった。



          ♥・*:.。。.:*・゚♡・*:.。。.:*・゚♥・*:.。。.:*・゚♡



「では、転校生を紹介しますね。」



 ホームルームが始まり、先生の言葉でみんながザワザワし始めてしまった。



 転校生に相当な興味があるのだろう。女子は目をギラつかせたが、男子は女の子ではないとわかっていたため、どうでもいいという顔をしている。



「えーっと、入ってきてください」
「失礼しま―す」



しかし、先生に呼ばれ男の子が教室へ入ってきた瞬間、男子生徒でさえもうるさくなった。



「キャー!!!!」
「イケメン来たぁぁぁあ!!」
「え、めっちゃカッコいんだが・・・・・?」
「お、おい!あの人って・・・・・・!」
「あぁ、そうだよな!スゲー、本物だぞ!!!」



(なになになに!!?)


 
 転校生について微塵も興味がなく、めちゃくちゃ眠たかったゆりはすでに寝る体制に入っていた百合は、たくさんの叫び声に驚く。



 もうすぐで眠れる・・・・・と、思った矢先にこのうるささ。まったく眠れない。



「(はぁ・・・・・・)」



 ため息をつきながら、フード越しに転校生やらを睨む。まぁ、フードをかぶっているため顔は見えないけど。