「お前がやいやい言うから2日も入院して必要のない検査まで受けてきただろ」
「そ、そうです、けど……っ」
「それに今日は転倒もしてないし怪我もない」
先日の撮影以来、事あるごとに気分が悪くなったりしていないかと聞く私に、本庄さんはぞんざいに答えた。
フルフェイスのヘルメットを被っていたとはいえ、猛スピードで走っていたバイクから飛び降りたのだ。頭を打っていても不思議じゃない。
とはいえ本庄さんの言う通り、病院で異常はないと太鼓判を押してもらい、後日撮影にも復帰した。
連れてこられたのは、会社から二駅のところにある高級低層レジデンス。
初めて訪れた本庄さんの自宅は博物館のような外観で絶対デザイナーズマンションだし、オートロックどころかコンシェルジュサービスまでついていて、まるでホテルみたい。
部屋の片面はコンクリート打ちっぱなしになっていて、そこに階段がついているという、ドラマでしか見たことのないオシャレな内装。
リビングには今私たちが座っている革張りの黒いソファとローテーブル、隅に置かれた大きな観葉植物以外はほとんど物がなく、モデルルームのように生活感がない。