後方のクラッシュした車から炎があがっているのを背中で感じ、いよいよクライマックスだと一段と気合を入れた。
残りの1台の車に追われ、薄暗い立体駐車場をまるで戦闘機のように猛スピードで走り、全開でドリフトする。
臨場感のある画を撮るため、カメラマンを乗せた車も並走しているため、距離を一歩でも間違えば台無しになってしまう。
緊張感で張り詰めた現場に、バイクと車のエンジン音が轟々とこだまする。
リハーサル通りに慎重に、それでもスピードは緩めずに走り、車を振り切って屋外の非常用階段をバイクで下りていく。
そこで待ち構えていた車に再度追いかけられ、目の前のガードレールにスピードを緩めず衝突した。
ガシャーンとガラスや車体が破裂する音と共にバイクが横転する直前に飛び降り、受け身を取りながら転がる。
胸を強かに打ち付け、息が詰まるような痛みに小さく呻いたところで、「カット」よりも先に「本庄さん…っ!」と愛しい彼女の声が遠くで聞こえた。