意地っ張りで素直じゃない彼女を、いちばん近くで守りたい。
想いは日に日に強くなり、徐々に距離を詰めていこうとしていたが、さくらは俺の気持ちに気付いているのか、頑なに一線を引いたまま。
今回の映画で共演する女優との仲を取り持とうとまでしてくる始末。
どれだけ世間で美人ともてはやされている女に言い寄られた所で、今俺がほしいのはさくらのみ。
覚えたてのガキじゃあるまいし、好きでもない女を抱く趣味はない。
それに、俺のいないところでさくらに何か言っているのも知っている。
当然ながらあのあと、椿という女優の誘いは綺麗に無視をして帰った。
『さくらに何を言っても無駄ですよ。あいつに惚れてるのは俺の方なんで』
帰り際にそう言ってやれば、悔しそうに唇を噛んで踵を返して去っていった。
SNSでなにか匂わせをして騒がれているらしいが、俺は無関係だしどうだっていい。
もう頃合いだ。いい加減、掴まえて自分のものにしたい。
グズグズしている間に他の男に取られるなんて冗談じゃない。
監督に自分がカースタントをしたいと申し出て、さくらにも俺の本心を伝えた。
「怖がらなくていい。祈らなくていい。ただ俺を信じて。そしたら、俺は何だって出来る」
瞳を潤ませ、それでも涙を見せまいと必死に顔をしかめているのが可愛くて、つい我慢出来ずに唇を奪った。