【俺は怪我してもいいから良い画が撮りたいって思ってるわけじゃない。誰も怪我をしないで良い画を撮るために、俺たちプロがいるんだ】

きっと本庄さんも同じ。

怪我をしないよう訓練をして、自信があるからこそ撮影に挑むんだ。

真っ直ぐな眼差しを正面から受けて、私はその瞳の中に彼の真意を探す。

「必ずさくらのもとに帰ってくる。だから、そこでしっかり見てて」

本庄さんの瞳が柔らかく細められたのを見つめていると、遠くから「えー!湊さんがやるんですかぁ?見たーい!」と緊張感のない甲高い声が聞こえてきた。

思わずビクッと身体を竦めると、目の前の彼は舌打ちしながら眉を寄せた。

「……アレと2人残して消えたのも、俺まだ許してないから」
「……え?」
「戻ってきたら、説教とお仕置きもプラスだな」
「な、なんですか、それ…」

不穏な響きに顔を顰める。
アレというのはもしかして、こちらに向かってくる椿さんのことだろうか。

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お互い一切そのことには触れないながらも、ここ最近の本庄さんはとても機嫌が悪かった。