普段見慣れている子供向けの戦隊ヒーロー達のアクションとは全く別物で、撮影に入り二ヶ月経った今日も、リハーサルの段階だというのに圧倒されてしまう。

素直に言葉にして褒めると、本庄さんはサングラスをずらしてニヤリと笑った。

「で、惚れた?」

目を細め、からかうように聞いてくるのはここ最近のお約束。

元々口が悪く、ちょっとした意地悪を仕掛けてきていた彼だけど、この頃はその意地悪に加え、ドキッとしてしまうような色を含んだ視線を向けてくるようになった。

4つ年下の私を子供扱いしていたはずなのに、なぜか熱い眼差しで見つめられているような気がする。

きっとそれすらも、私が恋愛経験が乏しいのをわかってからかっているんだろうけれど。

彼のような凄い人が私なんかを本気で口説くはずがない。

そうわかりきっているのに毎回律儀にドキドキしてしまうのを悟られないよう、私は努めて素っ気なく返事をする。

「バカなこと言ってないでさっさと戻ってください。あっちでヘアメイクさん困ってるじゃないですか」
「はいはい。じゃあそこでいい子にして見てろよ」
「もうっ、また子供扱いして! 早く行ってください!」

口を尖らせ怒ってみせる私の頭でポンポンと軽く手のひらを弾ませると、「よし、行ってくる」と極上の笑顔を見せ、踵を返してたくさんのカメラが向けられる場所へと戻っていった。

「いってらっしゃい」

いつものように声をかけながら、その笑顔にまんまと見惚れてしまったのは絶対に内緒だ。