だけど……、私はそんな風に割り切れない。

大切な家族を喪った悲しみは、未だに心の底に鉛のように沈んだまま。

父が亡くなったのは、私が小学生の頃。最期の別れの日、母が火葬場で棺に向かって泣き崩れていた姿は、今でも痛みとともに鮮明に胸に残っている。

いくらたくさんの人から伝説だなんだと褒め称えられようと、大好きだった父はもう帰ってこない。

そう思っているのにこの仕事に携わっているのは、やはり父の影響だった。

幼い頃からずっと見てきた特撮ヒーローに関わる仕事は、表舞台に立たずともやっぱり楽しいしやり甲斐もある。

だけど、父のことを思い出すたび、母が泣いていた姿を思い出すたび、私は思う。

スーツアクターとは付き合えない、と……。

本庄さんくらい動ける人なら、いずれ父のような危険なスタントの依頼もくるかもしれない。

そのたびに、またあの悪夢に怯えるのかと思うと怖かった。