それからも、何度も私は本庄さんに連れられてそのバーを訪れた。

子供の頃に父がスーツアクターを務めた番組を見たのがきっかけで特撮ヒーローにハマったこと。

キャラクターショーをもっともっと楽しんでもらえるようなものにしていきたいこと。

酔っ払って調子に乗って熱く語ってしまっても、仕事の話になると本庄さんは笑わずに聞いてくれた。

たまにお店がすいていると阿久津さんも会話に加わって、学生の頃の話をしてくれたりもした。

基本的に彼は聞き役で、私と違って酔ってしまうことはなかったけど、珍しく饒舌だった日があった。

確かあの日は父の10回目の命日。

彼はアクション映画が好きで、気に入っている映画にはすべて観月龍二の名前がエンドロールにあると知り、気になって調べたら『伝説のスタントマン』と呼ばれていることを知ったのだと、父を偲んで話してくれた。

『それからずっと憧れてた、龍二さんのアクション。いつか彼に追いつきたいって、ずっと思ってる』
『…父も、それを聞いたら嬉しいと思います』

口ではそう言いつつも、私の心中は複雑だった。