商店街の中にある小さなビルの二階にある隠れ家的なお店で、全体がアンティーク調の内装で統一された店内はとても雰囲気が良い。

マスターは渋いダンディな男性で、お酒を作ってくれたバーテンダーの阿久津さんは本庄さんの高校の同級生だという。王子様のようにキラキラしていた。

『わぁ…』

出してもらったカクテルに思わず感嘆の声を漏らすと、本庄さんがしかめっ面で『あいつは結婚してるぞ』と聞いてもいない情報をくれる。

『……へぇ?』

適当に返事をすると、彼はカウンターの向こうから可笑しそうにこちらを見ていた阿久津さんを一睨みしてから私に視線を移した。

『甘いからって飲みすぎんなよ』
『はい、でもこれほんとに美味しい』
『まぁ、俺といるときならいくら酔ったっていいけどな』

フッと色気のある流し目を向けられて、体温がぶわっと上がる。

控えめなBGMに暗い照明。大人な雰囲気の中で初めて飲むお酒は、甘いのに喉がクッと熱くなってクラクラする、なんだか本庄さんみたいだって思ったのを覚えている。