背景に写る重厚なインテリアはスイートルームと言われれば納得の豪華さで、後方のテーブルにはもうひとつシャンパングラスが置かれている。
なるほど、匂わせってそういうこと……。
そんな部屋で一緒に過ごす相手といえば、考えるまでもなく、ひとりしかいない。
昨夜は気になって眠れなかった。
私が自分の部屋で何度も寝返りをうってモヤモヤを抱えている間、あのふたりは……。
スイートルームで椿さんを抱き寄せる本庄さんが頭の中に浮かび、ズキンと胸の奥が酷く痛んだ。
ううん、傷付くなんておかしい。そんな資格なんてない。
彼を送り出したのは私で、恋人が出来ればいいと思ってたはずなんだから。
もう何度目かもわからないくらい繰り返し自分に言い聞かせる。
本庄さんに惹かれてはいけない。
胸の底から溢れてきそうになる感情に蓋をして、必死に見て見ぬ振りをしてきた。
自覚してはいけない。気付けば後戻りは出来ない。
そうなれば、きっと私は傷つくことになる…。