「芸能事務所じゃないんだね」
「はい、うちは一応イベント企画会社なので。本庄はスーツアクターとして弊社に所属してる形です」
「へぇ。さくらちゃんも?」
「私はただのマネージャーです」
「そうなの? でも君も人前に出てたんだよね? 3年くらい前だっけ、SNSで騒がれてたの」

早瀬さんにそう問われドキリとする。

なぜ知っているのだろうと疑問に思ったけど、うちの会社を調べた時、一緒に過去のネットニュース記事でもヒットして目についただけだろうと思い至った。

彼の言う通り、私は最初からマネジメント業務をしていたわけではない。

学生の頃はキャスト部のバイトとして、ヒーローショーに進行役で出演していた。

いわゆる『ショーのおねえさん』。

ショーが始まると一番最初に観客の前に行き、子供たちにショーの説明をしながら一緒に歌やダンスの練習をする。

そこに怪人が現れ、『おねえさん』である私が攫われるのがお約束。

『よーし、じゃあみんなで超惑星戦士マルスマンを呼ぶよー! せーのっ!』
『マルスマーーーン!!』

青空の下、響く子供たちの元気いっぱいな声。

特撮ドラマも小さな子供も好きな私は、ヒーローショーのバイトが楽しくて仕方なかった。

だけど、あることがきっかけで私はショーに出ることをやめ、裏方に徹するようになった。