番宣で出演するバラエティ番組ではハキハキ喋り、空気を読んで笑いも取れる。持ち前の天真爛漫な明るさで周囲の人間を魅了する人。

そんなテレビから受ける印象は、この現場に出入りするようになった二ヶ月であっという間に崩れ去った。

「俺だって事務所からNG出なきゃ、あのくらい動けるし」

テレビの中で見せる屈託のない笑顔は鳴りを潜め、至極不機嫌そうな顔で言う早瀬さん。

彼の不貞腐れたような言い分は、申し訳ないが子供が負け惜しみを言っている図そのものだと心の中で苦笑する。

早瀬さんはこの映画のために半年も前からトレーニングを積み身体を作り、アクションの稽古もしていたらしい。

確かに以前テレビで見た時はもっと華奢な印象で、よく見ると肩や胸に若干厚みがついたような気もする。

しかし彼の事務所は稼ぎ頭にケガでもされたら事だと、ハードな立ち回りはスタントを使うことに決めたそうだ。

早瀬さん的にはせっかくの主演作、スタントを付けずに自分で演じきりたかったのだろう。