「学校で受かったのって美桜先輩だけだったんですよね?先輩、頭だけはいいから」
「一言余計!もー.......「先輩すごいですね」って言ってくれるだけでいいのに、いつも馬鹿にしてくるんだから」
「ちゃんとすごいとは思ってますって。.......なら、お祝いついでに何か奢ってあげてもいい、です、よ?」
「え、ほんと!?やった〜っ。あ、私他の子のとこ行ってくるね!」
そう言って、俺の勇気を出して言ったご飯の誘いも、いとも簡単にかわして他の部員の元へ走っていった先輩。
ずっとこの調子で意識してもらえる様子もなく、あっという間に2年が経ってしまった。
「はぁー.......さすがにもうネタ切れなんだけど」
ちらりと向かい側のプールサイドに目をやると、先輩は後輩女子や顧問の先生と楽しそうに話している。
時折見える、あのひまわりみたいな笑顔に一目惚れしたんだ。今でも胸が高鳴る。
___“汐は素っ気ないから、先輩も気づかないんだよ”
先輩の引退試合の後、水泳部の同級生に言われた気がする。
この日も最後の試合に良い結果を残せなかった先輩を励まそうとご飯に誘って、やんわりかわされていた。
素っ気ないなんて、自分でもちゃんと分かってる。
それなのに素直になれないからイライラしてるんだ。