「そうじゃなくて、これ!」
もうなにー?と面倒くさそうに振り向く葵くんの目の前にもう一度紙を突きつける。
その紙はマス目の書かれた作文用紙。
『葵 優人』と名前だけ書かれたそれは他校より遅いうちの学校の文集の本番用紙だ。
地元で作るらしいうち伝統の文集は個人の作文だけを載せる簡素なもののためそう時間はかからないらしい。
そのため個人の作文は2月のあたままでが締め切りだ。
ーーーそう、2月あたま。今日までだ。
「ん?いー感じの空白感が読んだ人の考えを膨らませる、いー文集じゃない」
間延びした話し方のせいか、本気で言ってるのか、それともおちょくってるのかよくわからない。
……いやどっちでも迷惑なこと極まりないけど。