糠手姫皇女の誘拐未遂事件から、1ヶ月半程が経過していた。
その後2人の皇女は、炊屋姫の取り調べを受けて、全てを白状させられた。
話しによると、2人は誘拐だけでなく暗殺まで考えていたようだ。
ここまでくると、2人の皇女にも何ら処罰を与えなければならない。
だがここにきて、彼女ら2人を庇う者が現れた。それは他ならぬ、あの推坂彦人大兄皇子だった。
自身が糠手姫皇女に夢中になりすぎた事をどうやら彼は気にしているらしい。
とくに桜井弓張皇女《さくらいのゆみはりのひめみこ》は、推坂彦人大兄皇子の子を身ごもっている事が、先日発覚する。
そしてまず小墾田皇女《おはりだのひめみこ》は妃から外れ、今は謹慎中の身だ。
だが彼女が本当の主犯らしく、もしかすると流罪になるかもしれない。
一方の桜井弓張皇女は、このまま妃をつづけるか、はたまた他の男性に嫁がせるかをこれから話し合うとの事だった。
さらに躬市日の仲間達は、近くで今回の騒動の結果を嗅ぎ付けたのだろうか、さっと姿をくらませ、いなくなってしまっていた。
そして最後に、あれだけ椋毘登を想っていた糠手姫皇女は、どうやら諦めがついたらしく、まずは推坂彦人大兄皇子と直接向き合ってみることにしたようである。
その上で、この婚姻をどうするか決めることにしたらしい。
これが今回の事件後の出来事である。
そして一方の稚沙は、また新たな悩みを抱えていた。
「うーん、とりあえず自分の気持ちははっきりしたんだけど、これからどうしたら良いんだろう?結局、椋毘登が自分のことをどう思ってるのかは良く分からないし……」
ただ彼女的にちょっと嬉しい変化もあった。
前回の事件以降、椋毘登は小墾田宮にきた際は必ず稚沙にも会いに来てくれるようになっていた。
これまでは偶然会った時だけ会話をしていたが、今は必ず会いにくるし、次回いつ小墾田宮に来るのが分かっている場合は、それも教えてもらえる。
さらに最近は、手土産までもらえる時もあった。
「でも、さすがは蘇我よね。この間貰った柿の菓子は凄く美味しかった……」
最近は椋毘登に会えるだけでなく、その手土産も割りと楽しみにしていた。
(それに今の椋毘登なら、お願いしたら本当に好きな物を持ってきてくれるかも?)
それで今日は椋毘登が小墾田宮に来る日と聞いていた。
それで仕事をしながら、彼と会えるのを楽しみにしていた時である。
「あれ、稚沙、今日はここにいたのか」
彼女が振り返るとそこには椋毘登がたっていた。
「あ、椋毘登、今きたの?」
稚沙はとても気持ちを弾ませて、彼の元に近寄った。
そして彼女が側までやってくると、彼は何か包みものを抱えているのを目にする。
「椋毘登、どうしたのその包みものは?」
稚沙はそれを見て少し不思議そうにする。
「あぁ、これか。これはお前が前に食べてみたいといっていた蘇を持ってきた……」
※蘇:牛乳を固めて作った食べ物
「えー本当なの椋毘登、私一度食べてみたかったのよー!」
稚沙がその包み物に思わず触れようとすると、椋毘登は慌ててそれを頭の上にあげた。
「あのな、稚沙。蘇は俺達でもたまにしか食べれない。それをわざわざ持ってきてやったんだぞ。もう少し感謝をしろ!」
「あ、ごめんなさい。えっと……有り難うございます」
彼女は思った。ここは蘇を食べさせてもらう為だ。今は素直に彼に従おう。
「まぁ、分かったんなら良いよ。折角だし、今日は外で一緒に食べないか?お前の休憩に合わせて」
稚沙もそのことに関しては、特に問題はなかったので、彼の提案に同意することにした。
その後2人の皇女は、炊屋姫の取り調べを受けて、全てを白状させられた。
話しによると、2人は誘拐だけでなく暗殺まで考えていたようだ。
ここまでくると、2人の皇女にも何ら処罰を与えなければならない。
だがここにきて、彼女ら2人を庇う者が現れた。それは他ならぬ、あの推坂彦人大兄皇子だった。
自身が糠手姫皇女に夢中になりすぎた事をどうやら彼は気にしているらしい。
とくに桜井弓張皇女《さくらいのゆみはりのひめみこ》は、推坂彦人大兄皇子の子を身ごもっている事が、先日発覚する。
そしてまず小墾田皇女《おはりだのひめみこ》は妃から外れ、今は謹慎中の身だ。
だが彼女が本当の主犯らしく、もしかすると流罪になるかもしれない。
一方の桜井弓張皇女は、このまま妃をつづけるか、はたまた他の男性に嫁がせるかをこれから話し合うとの事だった。
さらに躬市日の仲間達は、近くで今回の騒動の結果を嗅ぎ付けたのだろうか、さっと姿をくらませ、いなくなってしまっていた。
そして最後に、あれだけ椋毘登を想っていた糠手姫皇女は、どうやら諦めがついたらしく、まずは推坂彦人大兄皇子と直接向き合ってみることにしたようである。
その上で、この婚姻をどうするか決めることにしたらしい。
これが今回の事件後の出来事である。
そして一方の稚沙は、また新たな悩みを抱えていた。
「うーん、とりあえず自分の気持ちははっきりしたんだけど、これからどうしたら良いんだろう?結局、椋毘登が自分のことをどう思ってるのかは良く分からないし……」
ただ彼女的にちょっと嬉しい変化もあった。
前回の事件以降、椋毘登は小墾田宮にきた際は必ず稚沙にも会いに来てくれるようになっていた。
これまでは偶然会った時だけ会話をしていたが、今は必ず会いにくるし、次回いつ小墾田宮に来るのが分かっている場合は、それも教えてもらえる。
さらに最近は、手土産までもらえる時もあった。
「でも、さすがは蘇我よね。この間貰った柿の菓子は凄く美味しかった……」
最近は椋毘登に会えるだけでなく、その手土産も割りと楽しみにしていた。
(それに今の椋毘登なら、お願いしたら本当に好きな物を持ってきてくれるかも?)
それで今日は椋毘登が小墾田宮に来る日と聞いていた。
それで仕事をしながら、彼と会えるのを楽しみにしていた時である。
「あれ、稚沙、今日はここにいたのか」
彼女が振り返るとそこには椋毘登がたっていた。
「あ、椋毘登、今きたの?」
稚沙はとても気持ちを弾ませて、彼の元に近寄った。
そして彼女が側までやってくると、彼は何か包みものを抱えているのを目にする。
「椋毘登、どうしたのその包みものは?」
稚沙はそれを見て少し不思議そうにする。
「あぁ、これか。これはお前が前に食べてみたいといっていた蘇を持ってきた……」
※蘇:牛乳を固めて作った食べ物
「えー本当なの椋毘登、私一度食べてみたかったのよー!」
稚沙がその包み物に思わず触れようとすると、椋毘登は慌ててそれを頭の上にあげた。
「あのな、稚沙。蘇は俺達でもたまにしか食べれない。それをわざわざ持ってきてやったんだぞ。もう少し感謝をしろ!」
「あ、ごめんなさい。えっと……有り難うございます」
彼女は思った。ここは蘇を食べさせてもらう為だ。今は素直に彼に従おう。
「まぁ、分かったんなら良いよ。折角だし、今日は外で一緒に食べないか?お前の休憩に合わせて」
稚沙もそのことに関しては、特に問題はなかったので、彼の提案に同意することにした。