放課後。

廊下では勉強から解放された人たちで溢れかえっていて、部活に行こうだとか遊びに行こうだとか色んな声が飛び交っている。

昇降口が混む前に帰ろうと、私は両耳にイヤホンをつけて足早に教室を去った。


今更言うのもなんだけど、私に友達なんて言うものはいない。

他人と関われば関わるほどバレやすくなるため、普段は極力一人でいるようにしている。


そのせいで「孤高の王子様」なんて呼ばれてるんだろうけど。


「(何が王子様だ、変なあだ名つけやがって.......)」

「うおっ、ごめん!」


モヤモヤと頭の中で不満を募らせていると、ふと向かいから階段を上ってきていた男子の荷物が肩に当たった。

多分、山積みのダンボールで視界が悪かったんだろう。

ぶつかった勢いでバランスを崩し、咄嗟に身体を支えようと出した右足が運悪く段差を踏み外した。


「ちょ.......っ」


やばい、これ落ちる。

頭打つ?骨折れる?

あれ、ていうか下、誰か_____


「う"っ.......と、ナイスキャッチ」

「え.......」


観念してぎゅっと力を入れた体は、どこにもぶつかることなく下に落ちていった。

恐る恐る目を開けると、目の前には同じ男子用の制服とほんのり甘い香りが広がっている。


「だっ大丈夫か伊澄!!?」

「う、うん.......大丈夫」


たまたま下にいた人が私を受け止めてくれたらしい。

お礼を言おうと顔を上げると、何となく見覚えがあった。