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女の子にとって、「かわいい」は

時に”幸せ“となり、

時に“恐怖”となる。

少なくとも私.......いや、俺にとっては恐怖だ。

拳銃やナイフと同じように。


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「琳くん、好きです.......付き合ってください.......!」

「.........ごめん」


多分、2年になってからもう十何回と受けた告白。

今日もいつものように一言だけ言い放って、目の前で涙を堪える彼女から離れていった。


伊澄琳(いずみりん)、性別“男”。

これは偽装で、実際は生粋の正真正銘女の子だ。


小さい頃、その男っぽい名前とは裏腹に可愛らしいモデルのような容姿でご近所でも有名だった私は、



中3の夏の終わり、女の子でいることをやめた。



男の子と同じように短い髪の毛。

男の子と同じような低い声。

男の子と同じ、ズボンの制服。


バレるのを避けるために一人暮らしをしてまで家から遠い高校に来たのはいいものの、今度は何故か女の子から言い寄られるようになった。

両親は男の子のフリをすることに何も言わなかったけど、私がいない時によく「ごめんね」と泣いていたのを知っている。

お母さんたちのせいじゃないのに。

悪いのは全部私なのに。

ただ怖がることしかできなかった自分と、女の子でいるだけで両親に心配をかけてしまう自分が大嫌いだった。

だから、もう迷惑はかけたくない。

このまま一生欺いて、男として生きていこうと思っていた。


なのに。





『お前女なの?』





人生が変わる、2時間前。