四人掛けの椅子に守さんが先に腰掛け、目の前に私、そしてその横に碧斗君が座る。それを確認して、守さんは壁にかけてある時計を気にしながら、父親に代わって説明を始めた。

 「うちはさ、昼間は一階の定食屋を営んで、夕方からはここでミュージックバーを経営してる。母さんがピアノ、父さんがベース。完全に自分たちの趣味で始めた店でね。じいちゃんは元々反対してたんだけど、なんだかんだ言いながらもそこのカウンターでよく酒を飲んでた。だけど今はここも休業中。父さんあんな状態でベースなんて弾けないし」

 淡々と説明をしてくれる守さんには申し訳ないけれど、正直私にはまったく話が読めなかった。ここが何をする場所なのかは想像通りの結果で分かりやすかったけれど、『なぜ私が』という部分が全然見えてこない。それについては横にいる幽霊も同感のようで、膝の上に置いている両手の拳にどんどん力が入っていっているのが私からも見てとれた。ただでさえ近くで親子喧嘩をしている状態なのに、ここでも喧嘩をされたらたまったもんじゃないので、私は答えを急ぐ。

 「あの……ここが何をする場所なのかは、分かりました。それで、私は何のために呼ばれたんでしょうか?」

 「あぁ、うん。実は君に手伝ってもらいたいことがある。そのために呼んだ」

 そう伝える守さんの瞳は真っすぐで、とても冗談を言っているようには見えなかった。それでも、残念ながら私に手伝えることなんてありそうもない。真っすぐな彼に申し訳ないと思いつつ、ごめんなさいと言おうとした時だった。後方にある店のドアが開く音がした。



 振り返ると、そこには一人の女の子が立っていた。