部活、試験、校外学習・・・私たちは順調に高校生活を送っていた。3学期に入ると、受験シーズンに突入した3年生の姿は、校内から消えたが、マラソン大会や合唱コンク-ル、イベントは目白押しだった。


そして、この時期の最大の私の中の出来事、それは人生初の彼氏が出来たことだ。


ある日の練習が終わり、私たちが体育館から更衣室に向かおうとすると、野球のユニフォ-ム姿の男子が立っているのが、目に入った。それが2年生のエース、柴山諒太(しばやまりょうた)さんであることに、すぐに気付いて、私は目礼して通り過ぎようとしたんだけど


「三浦。」


となぜか呼び止められた。柴山さんとはほとんど会話を交わしたこともなく、私のことを知られているとは思ってなかったから、キョトンとして立ち止まると


「お前のことが好きなんだ。俺と付き合ってくれないか。」


何の前置きもなく、ド直球で告白された。


「えっ・・・わ、私ですか?」


まさかこんな大勢のいる前で、そんな重要なことを告げられて、私は戸惑い、そして周囲は固まっている。既に日は暮れ、寒さ厳しい折、反応に困っていると


「ちょっと柴山、少しはTPO考えなよ。」


柴山さんのクラスメイトである若林琴乃(わかばやしことの)先輩が、たまりかねて間に入ってくれた。が柴山さんはその琴乃さんをキッと睨みつけると


「お前には関係ないだろ、俺は三浦に告ってるんだ。」


と言い返す。


「そうじゃなくてさ、紗月が困ってるのがわからないの?」


「うるさい。俺は自分の気持ちを三浦に伝える為に、退路を断ったんだ。」


柴山さんの言い分に、琴乃さんは呆れた表情になって、私に視線を向ける。他の視線も私に集まる中


「柴山先輩、告白していただいたことは素直に感謝します。でも、あまりにも突然なことで、正直頭が真っ白になって、今は何も考えられません。少し、お時間を下さい。」


そう言って、頭を下げると、逃げるようにその場を立ち去った。