でも私の高校生活は、チア一色じゃない。2学期が始まるとすぐに学祭。私たちの中学では文化祭のような行事がなかったから、私にとっては初めての体験。すでに1学期からスタ-トしていた準備に、わくわくしながら参加していた。


学祭では部の演技披露があるんだけど、今回は2年生がメイン。私はクラスの出し物である劇の方に力を注いだ。脚本もセットもみんな手作り。リストを作って、手分けして買い出しに行って、近所のスーパ-にダンボ-ルをもらいに行って・・・とにかく毎日が楽しかった。


「岡野、出来たか?」


そんなある日、クラスの実行委員が岡野くんに声を掛けた。


「うん、こんな感じでどう?」


それまで、パソコンとにらめっこしていた彼が顔を上げると答えた。その声に、私を含む周囲に居た何人かが、岡野くんの周りに集まる。


「あ、いいじゃん。」


「うん、イメ-ジ通り。」


「そう、ならよかった。」


私の言葉に、岡野くんがややはにかみながら、でも嬉しそうに言う。パソコン部所属の腕を見込まれ、セットに使う背景画を制作してくれていたのだ。


「よし、セットは目途が立った。後は練習だ。」


実行委員の言葉に、私たちは頷く。


土日2日間で、6回の公演を計画していた我がクラス。多くのみんなが部活と掛け持ちで忙しかったし、1人でも多くの人に出演して欲しかったから、キャストは公演ごとに異なっていた。そんな中、私と岡野くんは夫婦役を演じた。


と言って、別に濃厚なラブシ-ンがあったりするわけじゃないんだけど、でも私は正直、少しドキドキしていた。だけど、岡野くんの方は飄々とやや棒読み気味にセリフを言うと、あっさりと舞台から引っ込んで行った。それを見て、私も慌てて、あとに倣った。


実は私たちには、もう1度出番があったんだけど、それは幻に終わった。台風接近が報じられ、日曜午後の学祭が打ち切りになってしまったからだ。楽しみにしていた後夜祭も中止。


「なんかツイてないよねぇ。」


私は、クラスメイトたちと愚痴りながら、家路に急いだんだけど、今にして思うと、予想もしなかった事態に巻き込まれ、チグハグ続きとなって行く私たちの高校生活を暗示していたのかもしれない・・・。