友人たちの去就も、徐々にわかって来た。美奈も見事第一志望に合格。


「美奈、おめでとう。」


『よかった~、これで心置きなく、甘いもの食べに行ける。』


「そうだね、じゃ明日にでも行こうか?」


『うん、行く、行く!』


さすがに美奈の声も弾んでいた。学校の先生と塾のアドバイザ-にも報告を済ませ、ホッとひと息入れると、ふと岡野くんの顔が浮かんで来た。


(彼はどうなったのかな・・・?)


気になるけど、わからない。そうだ、彼とは連絡先も交換してないことに今更ながら気が付く。


中学生の時、彼に用事があって、一度だけ家に電話したことがある。中学まではクラスの緊急連絡網みたいのがあったんだけど、高校になったらクラスLINEになって、そんなのなくなっちゃって・・・。クラスが違い、お互い学校にも行かないから、会うこともできないし、連絡手段もない。


家はなんとなく、わかってるけど、でもいきなり訪ねて行くわけにも、ね・・・。


2日ある登校日は、1回目は私が、2回目が彼の方が休んですれ違い。


かくして、私たちは「ただのクラスメイト」に過ぎないという現実をまざまざと実感させられ、ため息を吐くしか出来ない。


受験の重圧から解放されて、クラスや部活の仲間、更には連絡が途絶えていた小中時代の友人達とも久しぶりに出掛けたり、話したりして、楽しい時間を過ごしてはいたけど、でもなにかポッカリと心の中に穴が開いているような日々。


(このままでいいの?紗月。)


心の中で自問自答する。答えが出ないまま、私たちに残された登校日はもう卒業式リハと当日、もうその2日だけ。


リハの日は午後登校だったけど、この日は本当にリハだけ。慌ただしい時間の中で、岡野くんの姿を見つけることは出来なかった。


そしてとうとう、卒業式当日がやって来た。