駅から電車に乗って、30分くらいの帰り道。私たちは一緒に帰る。考えてみれば、こんなに一緒の時間を2人だけで過ごすのは、出会ってもう8年にもなるのに初めて。


何度も言うけど、私たちはただのクラスメイト、それ以上の関係ではなかったから・・・。


「岡野くんはこれから何校受けるの?」


「4校、10学部かな?」


「えっ、凄い。」


「そうかな?予備校のアドバイザ-は10くらい普通って言ってたよ。その予備校のデータによると、9でも11でもよくなくて、10が一番成功率高いって。」


「それ、本当?」


「わからない、その人はそう言ってたよ。まぁそれに、下手な鉄砲も数打てば当たるって言葉もあるし。」


そんなことを話しながら、私たちは自宅の最寄り駅がある線に乗り換え。10分くらい乗ると岡野くんの、そしてその次が私の最寄り駅。ちなみに高校は更に1つ先の駅にある。


お別れの時間は、あっという間にやって来る。


「せっかくだから、ご飯でも食べて行かない?」


という言葉は、感染症が流行してなくても、たぶん私には言う勇気はなかったろう。


「じゃ、これから約ひと月、お互い頑張ろうね。」


岡野くんがそう言って、ニコリと微笑む。


「う、うん・・・あ、あの・・・。」


「なに?」


「ううん、なんでもない。じゃ次会う時は・・・お互いに吉報を。」


「うん、そうだね。じゃ、また。」


軽く手を挙げると、彼は電車を降りて行く。私を見送ってくれる様子もなく、すたすたと改札口に向かう彼の後ろ姿を見ながら、私はフッとため息を吐いた。


岡野くんは10回受けるって言ってたけど、私はそんなパワ-ないから、少数精鋭というか、とにかくピンポイント攻撃。どうしても行きたい大学学部があるから、そこと滑り止めに絞った。


両親の時代は、その大学学部につき、チャンスは基本的に1回だったそうだけど、今は共通テストを皮切りに、いくつもの受験方式があって、1つの学部に何度もチャレンジ出来る。


そして・・・私は無事第一志望に合格できた。3年前の高校受験の時は、まだ昔ながらの受験校に赴いて、貼り出された紙を見て、一喜一憂するスタイルだったけど、今は自宅でパソコンからポン。確かにこの方が楽だけど、なんか味気なかった・・・かな。