年が明けた。感染者数は上昇の一途、我が家はついに食事をバラバラに摂ることになった。全ては私の受験の為に。家族のサポ-トに私は感謝しかなかった。


始業式。私たちは内申書を受け取る為に、登校した。受験申込に必須のこの書類を受け取って、帰宅したらいよいよ手続きに入る。本当に戦いは目前に迫って来ていた。


今日が終わると、2度の指定登校日はあるが、次にクラスメイトが揃うのはもう卒業式前日のリハ-サルしかない。なのに、この日は分散登校。仲間たちと健闘を誓い合うことすら出来ない。自分達のことを思ってくれての処置であることは、充分に理解はしていたけど、やっぱり寂しくて、悔しかった。


2週間後、共通テスト。とうとうこの日が来た。2日間の日程で行われるが私は初日のみの受験。3科目の受講だけど、休憩時間もあって、ほぼ1日拘束される長丁場。肉体的より精神的にきつかった。


ようやく解放されて、会場を出た私に


「三浦さん。」


と声が掛かる。振り向いた私の胸は思わず跳ねる。だって・・・


「岡野くん。」


厳しい試験が終わったばかりとはとても思えないくらいに、穏やかな表情をした彼が立っていたから。


「お疲れ様。」


そう言いながら、近づいて来るから、私は動揺しながらも


「ありがとう、岡野くんもお疲れ様。」


と返す。


「どうだった?手応え。」


「まぁまぁ・・・かな。岡野くんは?」


「僕もまぁまぁ。得意の日本史は上手く行ったような気がするけど、英語がね。」


「やっぱり英語は鬼門だよね・・・。」


「三浦さんでもそうなんだ。」


なんて会話を交わしながら、歩き出す私たち。共通テストは学校毎の申し込みで、会場は自宅に近い所が割り当てられる。私たちが一緒の会場である可能性は高かったけど、教室はいくつもあるし、受験のことで頭がいっぱいで、彼のことを考える余裕なんかなかった。


でも会えて、帰り道が一緒でラッキ-。とにかく、こんな時間なんて全然とれなかったから。


そう言えば、岡野くんの志望校はどこなんだろう。聞いてみたいけど、よっぽど親しくないと聞き辛いもの。また同じ大学に行けたらいいな、なんて思うけど、大学の数なんて、首都圏だけでどのくらいあるか。それに頭の出来というシビアな問題もあるし。


ちなみに中学の頃は、私の方が勝っていた。高1の時も。でもクラスが離れてからはわからないし、正直私はそこから伸び悩んだからな・・・。