迎えた最終学年。密かに期待した岡野くんとのクラスメイト復活も叶わずに始まった最後の高校生活の1年。まず冷や水を浴びせられた気分になったのは、修学旅行の再延期。学校は6月実施の可能性を探ったが、第4波、第5波と感染症は情け容赦なく、私たちに襲い掛かって来て、ついに完全に中止となった。


「感染症の先行きが不透明だし、受験を控えている以上、これ以上の延期は、現実的ではない。」


と言われてしまえば、もうどうしようもない。かくして、私たちは修学旅行に行けなかった唯一の世代として、我が校の歴史に名を残す羽目となった。


「呪われてるね、私たち。」


1学期も半ばを過ぎた昼休み、美奈がため息交じりに嘆く。


「確かにね・・・。でもさ、嘆いてても仕方ないよ。なんにも出来なかった去年に比べたら、数段マシだよ。とりあえず体育祭は無事終わったし、部活もなんとか出来てるじゃない。このままなら学祭だって、きっと出来る。とにかく泣いても笑っても、高校生活最後の1年。悔いなきように、頑張んなきゃ。」


励ますようにこう言った私の顔を、美奈はまじまじと見ていたけど


「紗月はポジティヴだね。」


と感心したように言って来る。


「当然。何事も前向きにが私のモット-だもん。」


胸を張った私に


「でも、そんな紗月も、なぜか恋に対してはポジティヴじゃないよね?」


いたずらっぽい表情で、ツッコんで来る美奈。


「えっ、恋・・・?」


急にそんなことを言われて、戸惑っていると


「岡野哲哉のこと、好きなんでしょ?」


ズバッと言って来るから、誰かに聞かれてないか、思わず周りを見渡してしまう。


「岡野くんって・・・美奈、なに言ってるの・・・?」


「とぼけるんだ?あのさ、私、何年紗月の友達やってると思ってるの?だいたい、あのへんちくりんなマスコットキャラを可愛いって言い張ってる時点でバレバレなんだけど。」


美奈に決めつけられて、私はなにも言えなくなる。


「岡野っちはさ、悪い人じゃないと思うけど、特別魅力的でもないし。でも2回の進学を挟んだ6年間、ずっと同じクラスだったって、確かに凄い偶然だからねぇ。運命感じちゃった?」


「それもなくはないけど、でもこの2年はクラス別だし・・・。」


「じゃ、なんで彼なの?」


美奈は真っすぐに聞いて来る。