短い夏休みが終わり、2学期が始まる頃には、新型ウイルスの感染者数は落ち着きを見せ、経済活動の活性化を目指して、キャンペーンが盛んに行われるようになっていた。


学校の方は授業は通常体制に戻ったけど、学祭を初めとした大小のイベントは全て中止。


それでもこのまま感染が収まれば、延期になっている修学旅行は3年進級後、早々に実施とのアナウンスが流れ、胸を躍らせる。


そんな中、チアリーディング部は役員の代替わりが実施され、私は副キャプテンに選出された。だけどJapan cupが例年より3ヵ月遅れの11月中旬に延期された影響で、3年生はまだ引退出来ずにいた。


今年度からこれまでのセンター試験に変わって、共通テストという新しい制度が導入される。なにせ初めてのことで、いろんな情報が飛び交い、3年生たちの不安は日に日に募っているようだ。


Japan Cupは大切だけど、受験勉強も本腰を入れなければ間に合わなくなるかもしれない・・・悩みに悩んだ末、3年生の一部が、泣く泣く現役続行を諦めることになり、私たち2年生が、代わって、試合に臨まなければならなくなった。


「辞めた先輩たちには申し訳ないけど、これは私たちには思わぬチャンスだよ。先輩たちの為にも、全力を尽くそうよ。」


私たちはその思いを胸に、練習に励む日々。


密を避けるという命題を抱えながらの練習は、チアリーディング部にとっては、結構厳しいハードルだった。


顧問の指示を仰ぎながら、私は神経を使いながら、練習を進めていた。


その日の練習も、肉体的より精神的な疲れの方をより感じながら終わり、家路に着こうと校舎を出ると、前方に見覚えのある後ろ姿が。


「岡野くん。」


呼び掛けると、ハッと振り返った彼が私の顔を見て、ニコッと笑う。その笑顔に、私の胸はキュンと跳ねる。


「お疲れ、今帰り?」


そう言いながら、私に近づいて来る岡野くん。ドキドキが高まって来るのを感じながら


「うん。岡野くんは今日は部活だっけ?」


「いや、今日は正式な活動日じゃないんだけど、ちょっと時間外勤務。」


冗談めかして答えて来る彼と、向かい合う形になる。


「どうしたの?」


「美術部とコラボしてる我が校のマスコットキャラクターの制作がなかなか進まなくてさ。柄にもなく副部長なんか押し付けられちゃって、僕一応、制作責任者らしいから・・・。」


そう言って、苦笑いする岡野くん。