「お褒めに預かり光栄です」



私は彼女の言葉に模範的回答を返し一度櫛を動かすのを止める。



「言っておくけど、お世辞じゃないわよ!本当にあなたが家の執事の中で一番私の髪を扱うのが上手いのよ」



何故か彼女は褒めているのに怒っているような物言いをしてくる。



「はい、分かっておりますよ。お嬢様とは長い付き合いですから嘘がつけないのはよくよく分かっております」



私がそう言うと彼女は顔をいつもの花のような笑顔に戻してくるりと鏡台に体を向けた。