「すいません。もうちょっとだけ大きな声でお願いします」
俺は手元の本を閉じ彼女の声に耳を集中させる。
「だから!できたよ!できたけど、見せるのがちょっと…… 」
彼女がまた口ごもる。
「不出来なんですか?」
部長なのに珍しい。
「不出来ではない!不出来ではないぞ。ただ」
「書きかけ何ですか?」
「書きかけではない!…… いや、ある意味では書きかけなのか?…… まっ、まぁ!取り敢えず一度読んでくれ。話はそれからだ」
「はぁ?」
俺は手渡された原稿を広げ早速読み始める。
タイトルは
“君と私の物語”
なんだか部長にしては珍しく恋愛ものっぽいタイトルである。