「龍二、いいわよ、許してあげる。その代わりに、私とデートしなさい。でなければ、一生許さないんだからねっ」
「さすが僕の愛しいハニー。寛大なツンデレをありがとうございます。この神城龍二、誠心誠意を尽くしますので、ご期待くださいませ」

 ツンデレにしているつもりはない。これは、言葉が外に出ると、勝手となってしまう呪いよ。きっとそれに違いないわね。

 魔性の副作用に、こんなモノまであったなんて、奥が深いわね。

 そもそも、魔性の力はいつから使えるようになったのかしら。中学生のとき? それ以前から? 記憶を辿ろうとすると、頭が締め付けられる。

 それに、魔性の力はどうして私にだけ使えるのよ。
 親の遺伝なのか、もしくは……。あれ、私に親なんていたんだっけ? 顔が、名前が思い出せないし、頭痛が激しくなって……。

「ハニー、どこか具合が悪そうだね。保健室で……」
「だ、大丈夫よ、これくらい。私は全然平気なんだからっ」
「平気なわけないだろっ。さっ、大人しく保健室へいくんだ。僕にちゃんと掴まってくれ」

 えっ、龍二……。
 なんでそんなに真剣なの、なんでそんなに悲しい目をしているの。それに、どうして、普段の声とは違って……。

「う、うん……。龍二、ごめんなさい」
「いいから、謝らなくていいから。だから、僕の言うことを聞いて、保健室へ行こう」
「はい……」

 素直になれるのは、きっと頭痛のせいね。昔……は覚えていないけど、普段の私はこんなに素直じゃないもの。

 これが……男の人の匂いなのね。初めて嗅いだけれど、悪くないわ。それに、温かくて私を包み込んでくれるような広い背中。

 ──この身を預けるのもいいものね。

 私の意識はそこで途切れてしまう。
 次に目を覚ましたのは……。