──ピンポーン。
 朝から室内に鳴り響く呼び出し音。
 この土地では、私を迎えに来る知り合いなどいない。ただひとりを除いて……。

「グッドモーニング、マーイハニー、今日のキミは一段と綺麗だねっ」
「お、おはよう、龍二。その、ひとつ聞いてもいいかしら?」
「マイハニーのためなら、なんでもカモーンだよ」
「……昨日、初めて出会ったときの龍二と、その、なんと言いますか、話し方が違うといいますか」

 最初の印象はチャラ系紳士イケメンだった。でも、昨日私が倒れたあとからは……『ハニー』だとか、口調もなんだか軽く感じる。

 これじゃまるで……チャラ極め男じゃないの。私ってこんなのがタイプだったのかしら。違う、違うに決まってる。こんなの私のタイプじゃ……。

「なんだ、そんなことか〜い? おーけ、おーけ、ハニーのためにお答えしよう。これが本当の僕なのさっ」

 私は開いた口が塞がらなかった。目を丸め龍二を見つめてしまう。幻だろうか、彼の周囲に煌めく星々が瞳に映っていた。
 しかも、前髪をかきあげて、アイドルのようなポーズまで決めてるし。

「そ、そうなの。分かったわ、とにかく龍二、学校へ行きましょう。今日は遅刻しないようにしませんと」
「ちっ、ちっ、ちっ。僕は一度も遅刻なんてしてないよ、ハニー。昨日だって、僕が遅刻したんじゃない、学校が遅刻したにすぎないのさっ」

 私が車を奪おうとしたときには、『僕が遅刻する』って言ったじゃないの。まったく、これじゃポジティブ星人も真っ青なほどですわ。

「なかなかユニークなお考えですわね。……コホン、龍二、学校へ案内しなさいね」
「イエス・マイ・ハニー。さぁ、この僕が学校という魔境へエスコートひてあげるよ」
「なっ、いきなり何を……。こんなこと突然されたら……」