どうして嘘をついたんだろ。この男は私をおかしくする存在。だって、今の私は……心がこんなにも激しい音を奏でてるのよ。

 決めたわ、そうよ、私はこの男と関わらないようにする。そうでないと私は……。

「か〜ぐやさんっ」
「ひゃっ!? な、何をするんですかっ」

 いきなり耳元で囁くのは反則です。思わず顔をあげてしまいましたよ。

「やっぱり、神楽耶さんじゃないですか〜。同じクラスだったんですねっ」
「むぅ……。私はアナタなんて、知りま……」

 えっ、何、いきなり私の両肩を掴むだなんて。しかも、なんなのよ、そんの真剣な眼差しは……。だめ、収まってよ私の心音、これ以上大きくならないでよ。

「え〜、コホン。神楽耶さん、ひとめぼれです。僕とお付き合いしてください。お願いします」
「は、はい……」

 私は今なんて言いましたか。まさか、『はい』だなんて言うわけが……。違う、違うのよ、この龍二が真剣に頭を下げるから、つい、同調だけなのよ。

 落ち着きなさい神楽耶。いつものように、男どもをゴミ扱いするのと同じ対応をするのよ。私にとって男など道端に生える雑草と同じなんだから。

「あ、これはそうではなくて、その、あの……」
「ありがとうございますっ。この龍二、命を賭けて神楽耶さんに尽くしますので」

 ずるい、ずるいですわ。私の両手をいきなりつから強く掴んで……。これじゃ、もう、私どうしたらいいのか、分からないよ。

 何かの爆発音が聞こえたのは覚えてる。床が目の前に近づいて、そこから私の記憶は完全に失われてしまった。