うぅ……。不覚にも泣いてしまいました。このジェットコースターを侮りすぎたのが敗因ですわ。

 龍二との手は離さなかったものの、私は恐怖に敗れ去った。声こそ出してないけど、私の瞳は涙であふれていた。

「ハニー、キミに涙は似合わないさ」
「龍二……。ありがとう」

 私の涙を龍二が優しく拭いてくれる。
 真っ白なハンカチで優しく丁寧に……。
 龍二の気遣いに、私は思わず二度目の涙を流す寸前であった。

「ねぇ、次は観覧車に乗ってみたいわ。ダメ、かなっ」
「僕が断る理由なんて、あるわけないさ。さぁ、二人だけの新天地へ向かおうじゃないか」

 ふ、二人だけ!? しかも新天地ですって。そんなこと恥ずかしくて……。で、でも、断っちゃうと、フッたみたいになっちゃうし。私はどうしたら……。

「ハニー、ここが僕たちの新天地さ。この、大観覧車がねっ」
「ふえっ、大観覧車っ!? そ、そうだよね、観覧車だよねっ。私としたことが、何を勘違いしてたんだかっ」
「どうしたんだい、ハニー。顔が赤いけど具合でもわるいのかい?」
「ち、違うわよ。もぅ、龍二のばかっ」

 勘違いさせるようなこと言う龍二が悪いのよっ。
 私は何も悪くないわ、そうよ、絶対にそうなの。まったく、龍二ったら、わざとなのか、それとも天然なのか、分かりませんわね。

 心の中で不貞腐れながらも、私は龍二と一緒に観覧車へと乗り込んだ。
 ここは、本当の意味で二人だけの世界。もはや、私の顔は赤く染ったままであった。

「機嫌直してくれよ、ハニー。ほら、ここから見える景色は最高だよ」
「べ、別に機嫌が悪いわけじゃないしっ。こんな景色ぐらいで、私が……」

 ……すごい、綺麗、うん、この街って上から見ると、こんなに美しかったんだわ。幻想的とまではいかないけど、荒んだ心が洗われるわね。

 ガラスに顔を張り付かせ、私はこの絶景を目に焼きつける。瞳は満天の星空のように輝き、吐息で窓がわずかに曇っていた。