「ねぇ、龍二。今日はどこへ連れていってくれるの? そもそも、学校をサボってだと、補導されたりしないのかな」
「安心してよ、ハニー。それはノープロブレムさ。それに、今日は記念となるデートだからね、楽しみにしてくれよ」
「そう、なのね。私、龍二を信じるわよ」

 龍二が何者であろうと私には関係ない。だって、彼は私に恋の素晴らしさを教えてくれたから。相変わらず言動はチャラ男そものもだけど、でも、心の奥底に響く不思議な声なのだ。

 電車とバスを乗り継ぐこと数十分。私の目の前には、大きな施設がそびえていた。それは、テレビで何度も見たことがあるテーマパーク。
 デートとしてはベタかもしれないけど、初めて生で見るその存在感に私は圧倒されていた。

「さぁ、ここが僕とハニーのデートスポットさ。今日は一日、二人だけの貸切だよっ」
「えっ……。貸切って、ここはテレビでも紹介されてた有名なテーマパークでしょっ!?」

 ここを貸切だなんて、龍二は凄いのね。確かテレビで貸切できないって、言ってたような気がするけど。でも、細かいこと気にしたらダメよねっ。せっかくのデートが台無しになっちゃうわ。

「驚いてくれたかい、マイハニー。お客さんはいるけど、すべてエキストラだから、待ち時間を気にする必要はないさ」
「エキストラ……。でも、貸切なら二人だけでもよかったと思うけど?」
「それだと、デート気分にならないじゃないか。普通の場所、普通の景色でデートする。これが何よりの思い出になると、僕は思ってるのさ」
「貸切の時点で普通じゃないと思うわよ。でも、ありがとう、龍二。私、ここのテーマパークに行ってみたかったのっ」

 二人だけの世界……とまではいかないけれど、二人だけに用意された特別な場所。
 私の心は、足を踏み入れる前から浮かれていた。