デート、そうよ、今日は龍二との初デート。
 でも、服なんて……制服しかないわ。せっかくのデートなのに、もぅ、こんなことなら、お気に入りの服ぐらい、持ち歩くんだったわね。

 化粧台で髪を梳かす私に、朝陽が降り注いでいた。鏡に映る自分を見つめ、細かいところチェックすること数時間。
 私はもうひとりの自分に問いかけると、部屋をあとにし龍二の待つ玄関へと向かった。

「龍二、お待たせっ。変、じゃないよねっ、と言っても制服だから、普段と変わらないんだけど……」

 私はくるりと回ってスカートを靡かせてみせる。いつもの髪型でいつもの制服、それでも私は龍二に何かを期待していたのだ。

「ハニー、今日はいつもよりも、輝いて見えるよ。もちろん、いつも輝いていて、僕のハートを照らしているけどねっ」

 お世辞とは言え、龍二の褒め言葉に、鼓動がリズムを奏で始め、私は顔を赤く染めてしまう。嬉しい、その言葉が心に刻まれた。

「あ、ありがと。私の美貌なら何を着ても似合うと思うけどねっ」

 な、なんで変なこと言っちゃうのよっ。これじゃ、龍二に嫌われちゃうじゃないの。もぅ、私ってどうして素直になれないんだろ。

「この世界に、ううん、全宇宙を探しても、ハニーより美しい女性なんていないさ」
「……そんな恥ずかしいこと言わないでよ。ばかっ」
「照れてるハニーもステキだよ。では、僕とハニーのデートに行こうか」

 龍二の手が自然と伸び、私の手を優しく握り締める。指を絡めてきたのは彼の方。それはまるで恋人繋ぎのようにも見える。
 龍二の瞳どころか、顔すらまともに見ることができない。
 鼓動はすでに激しくなり、体全体にリズムを届けていた。