どれくらいたったかな。ううん、時間なんて、もうどうでもいい。私の中に魔性の力がある限り、恋なんてできないから。それに、龍二にどんな顔して会えば……。

 私を照らす星々のスポットライト。
 ただ一点だけを見つめ、私は虚無感に支配されてしまう。
 もはや、何を信じればいいのかすら分からない。そんなとき、私の視界に一枚の写真が入る。

 黒と黄色の二色しかない、普段なら気にもかけないただの紙切れ。それなのに、呼ばれたような気がして、私はその写真を手に取ったのだ。

「この写真……。なんだろ、ひょっとして、月……かな」

 どこにでもありそうな月の写真。
 私が食い入るように見ていると、頭の中で何かが再生され始める。荒い画像は時間とともに鮮明となり、やがてその全容が見えたのだ。

「思い、出した……。そうだったわね、私……地球で生まれたんじゃないのよ。私の故郷は……月、だったの」

 そう、私は月にある魔性国の姫よ。赤ん坊のときに、この地球へ送り込まれたんだわ。『あの人』がそう教えてくれたんだもの。
 それを知ったのは高校へ入学する直前、『あの人』が私にすべてを教えてくれたのよ。そう、あの日にね……。


「私が月のお姫様ですって? 新手の詐欺にしては、もう少しまともな嘘をついた方が、いいと思いますけど〜?」
「当然の反応ですね。で、も、神楽耶様には、この地球で男を虜にしてもらう、という重要な役目があるのです」

 若い女性に話しかけられ、私が月の姫だと教えられた。だけど、怪しさ満点な話など信じるわけもなく、私はそのままスルーしようとしていた。