「ジュニアに言われて、彼女の所在を調べるのに、長い時間がかかったからな。不思議な少女だよ、だが、どこか魅力的で懐かしい、とも思えるが」
「僕が同じ高校へ通ったのも、彼女と出会うため。と言っても、彼女は僕のことを覚えてませんでしたけどね」

 嘘、嘘よ……。龍二が私を追いかけて来ただなんて。これって、魔性の力で知らずに操っていたということなのっ。この恋は魔性の力でもたらされたの!?

 気がついてしまった事実に、目の前が真っ暗になる。それでも私は、龍二たちの話を聞き続けた。

「二年も前だからの、それは仕方がないぞ」
「はい、でも、こうして出会えたことに、僕は心から感謝しています」

 イヤ、イヤよ、そんなの絶対にイヤ。龍二に魔性の力が効かないのも、私に告白したのも……。すべては二年前に、彼を魔性の毒牙にかけていただからだなんて。
 こんなこと知りたくなかった。どうして、私は恋をしたらダメなの。どうして私には、魔性の力なんてものがあるのよ。

 気がつけば屋敷の中を走っていた。瞳に涙を浮かべ行く宛もなく、ただがむしゃらに……。このとき私の心は完全に崩壊してしまった。
 そして、何かに呼び寄せられるように、ある部屋に入ってしまう。月明かりが照らす部屋の片隅で、私はひとりで泣いていた。