「ん〜、それにしても、こんなに広いと体を思う存分のばせるわ。そうね、私は龍二のどこが好きになったんだろ。カッコイイところ? 優しいところ? それとも……」
「それは龍二様が持つ不思議なオーラだと思われます」
「──!? な、な、なんで佳奈さんがここにいるんですのっ。いつから、まさか、独り言を聞かれ……」

 真横から聞こえる声に驚き、私は思わず佳奈さんと距離を取った。顔が赤いのはお風呂のせいだと、自分に言い聞かせる。
 しかし、よく見ると佳奈さんは抜群のプロポーションで、これが大人の人なのだと、つい見入ってしまう。

「なぜ、と申されましても、ここはお風呂ですから、裸で入るのが普通かと思います」
「そ、そうじゃなくてっ。どうして一緒に入ってるんですかっ」
「それは体の隅々まで洗うよう、龍二様から仰せつかった、ような気がしたからです」
「り、龍二がそんなことを!? 私は自分で洗えますからっ」

 『龍二』という言葉で、私の心は完全に乱れてしまう。脳内では彼とのやり取りが映像化され、何も考えられなくなっていた。

「なるほど、龍二様に洗ってもらうのが、神楽耶様のご希望なのですね。かしこまりました、今すぐ龍二様をお呼びしますので」
「──!? そ、それはダメですからっ。絶対、絶対にダメですからーーーー」
「では、私が洗わせてもらいますね?」
「ここは湯船よ、ここで洗う必要なんて……。待って、そこは、だ、ダメよ。女同士でもダメですからねーーーー」

 私の胸を揉む佳奈さんを必死に引き離す。
 でも、脳内では佳奈さんが龍二に変換され、思ったように力が入らない。しばらくこの広いお風呂場で、私の叫び声が響いていた。