私の頭には龍二しかいない。というわけではなく、夢で見たあの神社が大半を占めていた。単なる夢のはずなのに、気になって仕方がない。

 授業中もずっとそれが気になり、私は学校が終わったのにも気がつかなかった。

「マイハニー、さぁ、この地獄からともに脱出しましょう。まだ見ぬ世界の果てへ、僕と行こうではありませんか〜」
「龍二……? あれ、学校は……」
「三十分前には終わってるのさ。だから僕と……」

 そっか、私、ずっと考えていたのね。うん、決めた、やっぱりあの神社へ行かなくちゃ。理由は分からないけど、そんな気がするモノ。

「ねぇ、龍二。私、どうしても行きたい場所があるの。連れて行ってくれるかしら?」
「おーけ、おーけ、マイハニーのためなら、たとえ地球の裏側だろうと、月だろうと、どこへでも連れて行こうじゃな〜い」
「えっと、月はさすがに無理だと思うわ。私が行きたいのは、『竹採神社』って場所なんだけど」

 夢で聞いたその名称。今はそれしか手がかりはそれしかない。どこにあるのか、まったく検討はつかないのに、私の口からその名前が自然とこぼれた。

「任せておくれよ、マイハニー。今すぐ僕がその場所へ連れて行ってあげるからっ」
「で、でも、名前しか知らなくて、他には何も情報がないのよ」
「ふっ、ふっ、ふっ、心配など不要さ。この僕にかかれば、たとえ足跡ひとつから、その人の性格まで丸裸にできるからねっ」
「そ、それはすごいわね」

 きっと冗談よね、本当なら警察より優秀ってことになるし。でも、調べるっていったいどうやって……。って、スマホひとつで分かると言うのね。

「ふむ、検索に引っかからない、か。これは困ったな」
「……いえ、それぐらいなら私でもできるんですけど〜?」
「まだ、まだだよ、マイハニー。ここで諦めるのは時期尚早だよ。この僕が持つ真の力を見るといい〜」

 ポーズを取るほどのことかしら。というより、廊下に出ていっちゃったし。これは……ここで待った方がよさそうね。