「――ほら、こんなもんでいいだろ」
そして数秒後。
私の手に再び色紙が返ってきた時には、字を間違えたはずの場所には、綺麗な花のイラストが描かれていた。
「…え!?なにこれ!?イリュージョン!?」
「大袈裟だな。別に誰だって描けるだろこんくらい」
「私には描けない!!!」
「…あー、はいはい。そーだったな」
すご…須藤って…須藤のくせに…
「美大もいけんの!?」
「何言ってんだよ。
いいから早く終わらせよーぜ、つか腹へったんだけど。なんか出せ」
「なんか出せって、偉そうに…」
「今手伝ってやってんのはどこの誰?」
くったしかに…無駄に芸術センスがある(失礼)須藤をここで敵に回すのは得策ではない!
「わかったよ、缶ビールでいい?」
「だから腹へったっつってんだろ」
「そー言われてもなー…」
自慢じゃないけど自炊はほぼしない。
そんな私の家に大した食材があるはずもなく。
「あっ、ポテトチップス発見!!…賞味期限1年くらい切れてるけど」
「…おまえ、どんだけだよ!」
須藤の深いため息が、やけに大きく1Kの部屋に響いた。