「なんで…ほっぺ?」
唇が離れて、至近距離で目が合う。
どこか気まずそうに視線を逸らして、須藤は再び、手すりに寄りかかった。
「…お前さ。嫌じゃねーの?」
「嫌って?」
「…好きでもねー男とキスすんの。まぁ、今更俺が言えたことじゃないけど」
「あぁ…そっか!世の女子は普通そーゆうもんなの!?」
「知るか。俺に聞くな」
ヤケクソみたいにそう言う須藤。
なにげなく、自分の右手に視線を落とした。
竹刀の握りすぎで、豆が硬くなってしまい、ゴツゴツした手。
「…須藤。私さ、意外と昔から好きなんだよね、頑張るの」
「はぁ?なんだよ、急に」
須藤の怪訝そうな質問には答えないまま、言葉を続ける。
「だから、この恋もできるだけ頑張りたいって。そう思う」