「ほらおしぼり使いなよ」
「…サンキュ。くそ、まじあちー」
こぼした紅茶を拭いている須藤を見ていたら、なぜか急に思い出した。紗良に言われたこと。
“そんな講義して、須藤隼人には何の得があるんだろうって思って”
「…ねえ須藤」
「何」
「須藤って私とヤリたいの?」
「……はぁあ!?!?」
須藤の裏返った大声が店内に響き渡って、店中の人が私たちを見た。
「ちょっ須藤のせいで見られたんだけど!ヤメてよ恥ずかしいじゃん!」
「お前が変なこと言うからだろうが!!!」
周囲の人に「すみません」と会釈しながら小声で責任の押し付け合いをする私たち。
「変なことって何。
だって、考えたんだけどさー。じゃなきゃ須藤が私に協力するメリットなんてないじゃん?」
「……言ったろ。ボランティアだって」
「須藤にそんなボランティア精神があるとは思えない。私のこと嫌いだし」
「…嫌いって」
何か言いたげに口を開いた須藤は
だけど何も言うことなく、こぼして紅茶がなくなったカップに、ポットの紅茶をつぎ足した。