「おー、着たか?」
店員さんの声で気づいたのか、須藤もやってきた。
鏡の中の私と目が合う。
須藤はなぜか数秒固まって
「…おー」
と力ない声を漏らした。
「ちょっと。何そのリクション。
似合うな~とか、なんかないわけ?」
「…べつに。普通だし」
「はぁ?」
「それ着て出てこいよ。外で待ってっから」
「ちょっ」
そして須藤はつまらなそうにそう言って、
さっさと外に出ていってしまった。
…自分ではけっこう悪くないなって思ったけど
須藤にとってはそうでもなかったらしい。
「…別に褒めてもらいたかったわけじゃないけどー」
思わず漏れた独り言に、店員さんがクスッと笑った。
私と目があって、慌てて笑いを引っ込める店員さん。
「あっ、す、すみません。なんか可愛いなって思って。まだ付き合い初めですか?」
「え!?いえあの、全然付き合ってないです…」
まさか須藤とカップルに間違えられる日がくるとは。
ていうか今のどこに、付き合ってると思われる要素があったんだろう?
「きっと照れ隠しですよ。
お客様、そのニットワンピすごくお似合いですもん」
「え、そうですか?えへへ」
お世辞と分かっていても嬉しいもんだなー。
「色白だから、真っ白なお色がよく似合って羨ましいです。お連れの方はお客様のことをよく分かってらっしゃるんですねー」
須藤が、わかってる?私のことを?
「…いえ、絶対、たまたまですよー」