月の光が差し込む庭から姫君を連れ出した。
薔薇は月光に輝いて一層白く咲きほこった。

ハニーが前を歩き、後ろにアリスとエヴァがついていく。

ハニーは事あるごとに「木の根に気をつけてください」とか「枝葉が出ていますから頭上にお気をつけを」などと言ってくれた。


「アリス、私にこのような機械を儲けてくれて有難う。
感謝いたします。」


エヴァが唐突に言った。


「そ、そんな・・・。
そもそも私たちがリルをさらったのが発端なんだから、感謝されることは何一つされてないし・・・。」


するとエヴァはふと笑った。


「私も、お姉さまも、お母様もお父様も、皆臆病だったのです。
誰も歯車を動かそうとしなかった。」


「歯車?」


エヴァがこくりと頷く。


「誰もが恐れ、この単調な殻の中に閉じこもることで幸せを感じた。
けれどあの盗賊団が、貴方が、壊してくれた。

貴方はもうご存知なんでしょう?私のことを。」


最後の言葉を聞いてアリスは俯いた。


「私はもう、何も怖くはありません。
今まで口をつむんで来たことを後悔しました。」


その顔はとても清々しく、美しかった。