俺は今日も叶華の手を引いて帰りたい気持ちが膨れた。叶華は楽しげに合宮と一緒にいる。俺の入る隙がない…。

「紳!紳って!今日はどの女を連れてくんだよ」

「…みつるうるせー。俺は女なんて連れて行かないよ」

「またまた〜!紳はいつでも欲求不満だろ!」

みつるは調子に乗って、俺の腕に肘で突いてくる。俺は呆れた。どれだけ俺が遊んでいるように見えるんだよ…。ウザイな。俺は嫌気が差して、みつるを突き放した。

「お前の方が欲求不満なんじゃねーのかよ!!!」

「は?!………ハハッ!うわ、紳こえー」

俺は思った以上に声が張り上げて言ってしまった。みつるは意地悪に引きつった顔をして、俺に言ってきた。俺はみつるが許せない気持ちになった。俺は、その場から逃げた。

叶華に会えると思って、戻って来た地域でこんな思いをするなんて…。

俺は堤防沿いの外をひたすら歩いた。すると、ピピッとスマホの着信音が鳴った。スマホを取り出すと、そこには凛斗お兄ちゃんからだった。

「なに?お兄ちゃん…」

「俺さ、一旦、仕事休暇に入るんだ。そっちに戻るよ!紳、家でたくさん遊ぼうな!」

お兄ちゃんの声は相変わらず、陽気な声だった。俺はその言葉に驚いた。戻って来るだなんて…。

「えっ……、そんな…」

お兄ちゃんは戻ってきてほしくない。お兄ちゃんから離れたいのに…。

「なんでなんだよっ!……っ、戻ってくるなよ!俺を傷つけないで…」

俺は涙がポロポロとこぼれ落ちてきた。お兄ちゃんのせいだ…。これまでだって、お兄ちゃんのせいだったのに…。